2011年 11月 17日
身も心も |
数年前に妻を亡くし、今は息子一家と同居しているが、なんとなく身の置き所がないような、孤独な日々をすごす75歳の主人公。
老人クラブの絵画同好会で美しい女性と知り合い、親密になっていく二人だが、息子一家は二人の関係を快く思っていない。
女性には辛い過去があり、打ち明け話を聞いた直後に、主人公は脳梗塞で倒れてしまう。
二ヶ月の入院後、老人介護施設に入ることになった主人公のもとに、献身的に通う女性。
認知症の症状が進み、記憶が曖昧になっていく中、主人公は女性と過ごす時間を何よりも大切に思うのだった。
主人公が倒れてからの描写がすごくリアルでした。
老齢同士の恋愛、結婚って、介護の話題が必ずついてくるものです。
実家の母親は「気ままな一人暮らしを楽しんでいるのに、今更他人の介護はしたくない」と言います。夫を亡くした女性の多くがそう思うものだと思いますが、この小説のヒロインは事情があって、60代まで未婚。ずっと一人でつましく暮らしてきました。
好きになった男性が要介護状態になり、そのお世話をすることによって、自分自身も癒されると考える。
ああ、そういう考え方もあるんだなあ、と思いました。
主人公の状態はもっとひどくなっていくかもしれないし、彼女だっていつ介護が必要な存在になるかもしれないし、先のことはわかりませんが、だからこそ切実に今を生きる、そういうメッセージが強く伝わってきました。
身につまされる、というほど、老いてもなく、介護が身近なわけでもない私ですが、いろいろ考えさせられますね。
by pohcho
| 2011-11-17 15:49
| 読書
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